このミス1位の『爆弾』を読んだ

最近読んだ本のことを書きます。

西村寿行『無頼船』(1981):寿行は昔、よく読んだ。図書館で目に付いたので久しぶりに借りてみた。エロスとバイオレンス。あまり今の気分じゃないかな。

津村記久子『現代生活独習ノート』(2021):もはやジャンル分け不可能。独特の世界観です。

三田誠広『尼将軍』(2021):彼の『清盛』(2000年)を読んだのでその流れで手にしました。わかりやすくて勉強になります。『清盛』のあとがきでは、作者はこのあと「頼朝」と「後白河」も続けて書きたいと言っていた。それは実現してない。

呉勝浩『爆弾』(2022):「このミス1位で面白いよ」と勧められて読みましたが、ダメでした。やりたいことはわかる。取調室でのサイコパスと警察の知力を尽くした心理戦を描きたいんだよね。でもその心理戦が作者の勝手なルールの下で行われていて、茶番にしか見えない。犯人の言動から警察が推理して動くんだけど、その推理が論理的におかしい。おかしいけど小説では正しいことになっている。読んでいて苦痛。犯人と刑事の取り調べ会話では哲学的なこととか社会批判的なこととかも織り込まれているんだけど、ちゃち。薄っぺらい。これがこのミス1位ですか。呆れました。

あと気づいたのは、パクリとまでは言えないけど容疑者Xに構成が似てる。Xは母娘が犯した殺人を数学者が彼女たちをかばうために自分が殺人を犯したことにして、さらに母娘のアリバイ工作のために罪のないホームレスを殺す。このころの東野は面白い小説も書いていた。いまはクソみたいなものしか書けなくなった。

 


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